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57 一冊の本から見るナショナルトラストの文化面(少し真面目なお話5) [少し真面目なお話]

『図説英国ナショナルトラスト紀行』という本がある。勿論ナショナルトラストの本なのだが、読みようによっては、英国文化人の逸話の本にもなり得る。このブログではナショナルトラストの歴史的価値にしか触れておらず、現在のプロパティについて触れたのは微々たるものである。理由は簡単で、わたしが歴史的な見地に知識が偏っているからである。いままでも湖水地方やロバート・ハンター、ヒル、ポターなどのエピソードはことあるごとにつけ触れてきたが、ナショナルトラストの「今」はほぼ初めて扱う。わたしも知らない「今」を教えてくれるこの本の有用性とおもしろさを伝えるべく、そんなわけで、今回は書籍案内といきたい。
 この本の著者である小野まりさんという方はナショナルトラストの楽しみ方をよく知っている方だと思う。本書のあとがきのところでも、彼女のその感性を拾うことが出来る。プロパティにいると嬉しいという気持ちをお持ちのようで、その気持ちは本文の事細かな説明やナショナルトラストの知識を集めた巻末の部分でもよく分かる。わたしが十九世紀西欧文化に触れていると楽しいのと同じなのかな? などと思っている(わたしなどと一緒にしたら失礼かな・笑)。
 この本が扱っている主な文化人や歴史人物を順に拾っていってみると、ワーズワース(詩人)、ジョン・ラスキン(美術評論家・大学教授)、ベアトリクス・ポター(絵本作家)、ウィンストン・チャーチル(元首相)、ウイリアム・モリス(芸術家・インテリア作家)、アイザック・ニュートン(科学者)、バーナード・ショー(作家)、トーマス・E・ロレンス(考古学者)、アガサ・クリスティ(作家)、ジョン・レノン(音楽家)、ポール・マッカートニー(音楽家)などの生家やもと所有の家などである。これらは皆、ナショナルトラストが委託を受けて、管理や手入れをしているプロパティである。
 これらのプロパティにそれぞれの説明文が載せてあり、そこには大まかな元所有者などの人生や偉業が書かれている。例えばニュートンを知る人は多い。リンゴが木から落ちる現象から万有引力の法則の着想を得たことは、何処かで皆が知ることになるエピソードである。そしてこのニュートンの家には、窓から見えるリンゴの老木があるそうだ。それが引力の発見に貢献したリンゴの木である。
 あるいは教区に10人足らずの人口しかない牧師の館が、廃止となる際に買い手を探していた。そんなときに田園生活へと移行しようとしていたショー夫妻の元に物件購買案内が聞こえてきたため、牧師の館はショーの創作アトリエになった。『ピグマリオン』(映画のタイトルは『マイ・フェア・レディ』)で有名な劇作家である。庭の片隅には執筆小屋も残されており、タイプライターなどもそのまま置かれている。
 また元ビートルズのジョン・レノンが幼少期から青春時代を過ごしたミミおばさんの家(母ジュリアの姉)もミミおばさんがいなくなってから、オノ・ヨーコさんが買い取り、ナショナルトラストに寄贈委託したのだという。この家の裏手には楽曲で有名になったストロベリーフィールドもある。この家とその時代を思って作り上げたのが『イン・マイ・ライフ』という曲で、人生観を綴った詩と間奏部分のピアノが美しいことでも知られている曲だ。
 ほかにも映画のハリーポッターシリーズやバーネット夫人原作の『秘密の花園』などの舞台となったプロパティ、紅茶の美味しいプロパティ、バラの花の美しいプロパティなどなど、英国の文化や習慣が沢山詰まった楽しい本である。
 わたし自身がこの本を良いと思った理由は、その装丁とレイアウト(台割り・ページ割りを含む)にある。カラーグラビア印刷のページがふんだんにある本は、大抵読み応えがない。ところがこの本は写真も豊富、説明も豊富と一番知識を得るのに有用な形態をしているからである。ビジネス上のご迷惑になるので、本の中身は写せないが(正確には公開できないが)、まず読み応え、見応え十分な内容である。少しでも英国やナショナルトラストに興味がおありの方にはおすすめである。一般的な書店や図書館には、ほぼおいてある河出書房新社のふくろうの本シリーズなので、何処かでお手にとって確かめていただけると、わたしのここで述べていることがご理解いただけるだろう。そんなわけで今回は、文学や文化、自然保護などにつながるお話ということで、一冊の本をご紹介した。
 蛇足だが、四年目が近づくこのブログ。最初のスタート時はページビュー(閲覧数)月に二桁前半、正確には15回弱程度だった。きっと四、五人しか来ていない(のどかだ・笑)。それがありがたいことに、この自然や歴史、文化、写真、生涯学習といった地味な内容にもかかわらずひと月に四桁の閲覧数に達した(五桁にはほど遠いくらい。推測付くかな?・笑)。真面目にやってきた甲斐があったかなと思う。一重に遊んでいって下さる皆さんのおかげだ。この1割から2割程度が重複を除いた実人数かなと思っている。もちろん何十万というリピーターを抱えるような権威的あるいは人気のあるブログというわけではない。わたしもそのようなものを目指していない。出来る範囲で、自分の都合の付く範囲で、無理することなく、更新するつもりである。草の根のようなインターネットの端っこで文化や芸術の戯言を密やかに楽しみ合える皆さんに来ていただければ、それだけで嬉しく思っている。またお時間があるときは、なんの奇抜さも特典もないが、ぜひこの地味なブログを覗いていっていただきたい。大感謝。


次回はクラッシック音楽のホール、社会教育施設のご紹介といきたい。



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